体上の正方行列が零因子になる条件

体(例:実数体、複素数体)上の正方行列が零因子になる条件は、基本的な結果であり、それを導くのも難しくないのですが、線型代数や代数学の入門書には意外と書かれていません。

まず、体上の正方行列は、零因子か正則行列のどちらかです。しかも、一方のみ成り立ちます。つまり、正則行列かつ零因子であるようなものは存在しません。

なお、1より大きい整数や体上の定数でない多項式は零因子でも正則行列でもありません。また、例えば整数成分の対角行列を考えると、整数成分の範囲では零因子でも正則でもありません。ですので、零因子と正則行列しかないというのは、体上の正方行列における著しい性質だといえます。

よく知られているように、正則行列であるための必要十分条件は、行列式が0でないことです。後者はさらに、0が固有値でないことと同値です。この対偶を考えれば、体上の正方行列について、以下の条件がすべて同値であることがわかります。

  • 零因子である
  • 行列式が0になる
  • 0が固有値の一つである

一般に、零因子には左零因子と右零因子があります。ところが、体上の行列においては、左零因子であることと右零因子であることは同値になります。しかも、Aが零因子のとき、あるOでない正方行列Xが存在してAX=XA=Oとなります(ヒント:行列Aの最小多項式を考える)。ただし、AX=Oを満たす全てのXが必ずしもXA=Oを満たすとは限りません。その逆も同様です。

冪零行列は、零因子の特別なものです。体上の正方行列が冪零行列になるための必要十分条件は、固有値が0のみであることです。

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