OECDが発表する購買力平価の定義について

OECDの購買力平価の定義は、通常の定義と違うらしい。通常のものを算術平均による定義とするなら、OECDのほうは幾何平均による定義である。自分用のメモ。

通常の購買力平価の定義

購買力平価(PPP:purchasing power parity)とは、それぞれの通貨の購買力が等しくなる為替レートのことである。

購買力平価は、「同じ財はあらゆる場所で同じ価格で売られる」という条件、いわゆる一物一価(いちぶついっか)の法則が成り立つことを前提として定義される。

購買力平価の通常の定義は次の通りである。Xを財のバスケット、[d]、[e] を2つの通貨単位とする。Xの価格が p [d] かつ q [e] であるとき、Xに関する2つの通貨間の購買力平価とは、

1 [d] = q/p [e]

という(名目)為替レートのことである。

例えば、生活に必要な一定量のモノやサービスの買い物カゴを考えて、その購入金額がアメリカで1,000ドル、日本で80,000円なら、80,000/1,000 = 80 だから、その買い物カゴに関するドル・円の購買力平価は 1ドル = 80円 となる。

イギリスの経済誌『The Economist』が考案した、マクドナルドのビックマックに関する購買力平価が有名で、ビックマック指数と呼ばれている。

2009年7月16日時点で、ビックマックの価格はアメリカでは3.57ドル、日本では320円。したがって、この時点でのビッグマック指数は 1ドル=89.6円。

定義を少し書き換えてみる。x_1,x_2,...,x_n を財(重複を許す)、[d]、[e] を2つの通貨単位とする。x_iの価格が p_i [d] かつ q_i [e] であるとき、x_1,x_2,...,x_n に関する2つの通貨間の購買力平価とは、

1 [d] = (q_1+q_2+…+q_n)/(p_1+p_2+…+p_n) [e] 
      = ((q_1+q_2+…+q_n)/n) / ((p_1+p_2+…+p_n)/n) [e]

という為替レートである。

2つの定義は同じことを言っている。なぜなら、Xを財のバスケット、pをXの価格とし、Xの中身を x_1,x_2,...,x_n、各x_iの価格をp_iとしたとき、p=p_1+p_2+…+p_n が成り立つからである。

幾何平均によって定義された購買力平価

通常の購買力平価は、算術平均(=通常の平均)で定義されたものである。それに対して、幾何平均(=相乗平均)で定義された購買力平価というものも考えられる。

x_1,x_2,...,x_n を財(重複を許す)、[d]、[e] を2つの通貨単位とする。x_iの価格が p_i [d] かつ q_i [e] であるとき、x_1,x_2,...,x_n に関する2つの通貨間の(幾何平均で定義された)購買力平価とは、

1 [d] = (q_1/p_1)^{1/n}×(q_2/p_2)^{1/n}×…×(q_n/p_n)^{1/n} [e]
      = (q_1×q_2×…×q_n)^{1/n} / (p_1×p_2×…×p_n)^{1/n} [e]

という為替レートのことである。

さて、OECDの購買力平価の定義について、OECDが公開しているマニュアル:

EUROSTAT-OECD Methodological manual on purchasing power parities (PPPs)

の第7章を読んでみると、OECDが実際に算出している購買力平価(Fisher type PPPs あるいは EKS PPPs)は、幾何平均で定義された購買力平価を「拡張」したもののようである。

【theme : 経済
【genre : 政治・経済

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