変形三囚人問題を直接的に解く

変形三囚人問題を、ベイズの定理を使わず直接的に解いてみた。

変形三囚人問題とは

変形三囚人問題とは、市川伸一『確率の理解を探る―3囚人問題とその周辺』に載っている、三囚人問題をアレンジした以下の問題である。

3人の囚人 a、b、c がいて、2人が処刑され1人が釈放されることがわかっている。釈放される確率は, a, b, c それぞれ 1/4、1/4、1/2 であった。誰が釈放されるか知っている看守に対し、a が「b と c のうち少なくとも1人処刑されるのは確実なのだから、2人のうち処刑される1人の名前を教えてくれても私の釈放についての情報を与えることにならないだろう。1人を教えてくれないか」と頼んだ。看守は a の言い分に納得して「b は処刑される」と答えた。さて、この答えを聞いたあと、a の釈放される確率はいくらになるか。

各囚人の釈放される確率(いわゆる事前確率)が、オリジナルの問題では等確率でしたが、変形問題では異なっています。

問題の内容を整理すると、釈放される囚人が選ばれる試行において、

  • a が釈放される確率は 1/4。
  • b が釈放される確率は 1/4。
  • c が釈放される確率は 1/2。

看守が処刑される囚人を答える試行において、看守は「a は処刑される」とは決して答えないので、

  • a が釈放されるとき、看守が「b は処刑される」「c は処刑される」と答える確率はそれぞれ 1/2。
  • b が釈放されるとき、看守が「c は処刑される」と答える確率は 1。
  • c が釈放されるとき、看守が「b は処刑される」と答える確率は 1。

解答

釈放される囚人が選ばれる試行の確率空間を (Ω_0, P_0) とおき、a が釈放される場合を a∈Ω_0 とし、他も同様とする:

Ω_0={a, b, c}, 
P_0({a})=1/4, 
P_0({b})=1/4, 
P_0({c})=1/2. 

a, b, c∈Ω_0 それぞれに対して、看守が処刑される囚人を答える試行の確率空間 (Ω_a, P_a), (Ω_b, P_b), (Ω_c, P_c) が定まる。a が釈放されるとき看守が「b は処刑される」と答える場合を b∈Ω_a とし、他も同様とする:

Ω_a={b, c}, P_a({b})=P_a({c})=1/2, 
Ω_b={c}, P_b({c})=1,
Ω_c={b}, P_c({b})=1.

このとき、問題の状況を定式化した確率空間 (Ω, P) は、

Ω={(x, y)|x∈Ω_0, y∈Ω_x}
  ={(a, b), (a, c), (b, c), (c, b)}, 

P({(a, b)})=P_0({a})P_a({b})=1/4×1/2=1/8, 
P({(a, c)})=P_0({a})P_a({c})=1/4×1/2=1/8, 
P({(b, c)})=P_0({b})P_b({c})=1/4×1=1/4, 
P({(c, b)})=P_0({c})P_c({b})=1/2×1=1/2

によって定まる(2つの試行の樹形結合の確率空間)。「a が釈放される」という事象を A_1とし、b, c についての事象も同様に A_2, A_3 とおく。また、「看守が『b は処刑される』と答える」という事象を H とおく。すると、

A_1={(a, y)∈Ω|y∈Ω_a}={(a, b), (a, c)}, 
A_2={(b, y)∈Ω|y∈Ω_b}={(b, c)},
A_3={(c, y)∈Ω|y∈Ω_c}={(c, b)}, 
H={(x, b)∈Ω|x∈Ω_0}={(a, b), (c, b)}. 

∴ A_1∩H={(a, b)}. 

これより、

P(H)=P({(a, b)})+P({(c, b)})=1/8+1/2=5/8, 
P(A_1∩H)=P({(a, b)})=1/8. 

求める確率は P(A_1|H) である。つまり、看守が『b は処刑される』と答えるという条件の下で、a が釈放される(条件付)確率である。それを計算すると、

P(A_1|H)=P(A_1∩H)/P(H)=1/5. 

参考文献

  • 伊藤清:確率論, 岩波書店, 1991
  • 市川伸一:確率の理解を探る 3囚人問題とその周辺, 共立出版, 1998

【theme : 数学
【genre : 学問・文化・芸術

プロフィール

よしいず

Author:よしいず
MATHEMATICS.PDFというウェブサイトを運営しています。

管理の都合上、トラックバックとコメントはオフにしてあります。ブログ経験者なら分かっていただけると思いますが、スパム(アダルトやその他の宣伝)ばかりなのが現実です。

リンクは自由です。当サイトの記事に対する間違いの指摘・意見・感想などを述べた記事からのリンクは歓迎です。ただし、ブログ記事アップ直後はミスが多く、頻繁に修正します。場合によっては削除する可能性もあります。その際、何も断りもなく修正・削除しますがご了承ください。内容を参考にする場合には投稿後一週間ほど様子を見てからにしてください(笑)。

記事の間違いを指摘するときは、その具体的箇所、理由(仕様に反するなど)・根拠(参考にした文献など)、代替案(同じ結果を得るための正しいやり方)も教えてください。そうしないと、(指摘される側および第三者はその時点では無知の状態なので、)どこが間違いなのか分かりませんし、本当に間違っているのかどうかが判断・検証できません。実際、間違いだと指摘されたことが結局は正しかったというケースもありますので。

このブログのタイトル一覧

リンク
月別アーカイブ
カテゴリ
最新記事
検索フォーム
RSSリンクの表示