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Dirichlet指標の定義

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Dirichlet 指標の定義

$m$ を正の整数とする. 写像 $$ \chi:\mathbb{Z}\longrightarrow\mathbb{C},\quad a\longmapsto \chi(a) $$ が法 $m$ に関する Dirichlet 指標であるとは, 次の条件を満たすときにいう.

(1) 任意の $a$, $b\in\mathbb{Z}$ に対して, $$ a\equiv b\;(\mathrm{mod}\;m)\Longrightarrow\chi(a)=\chi(b). $$

(2) 任意の $a$, $b\in\mathbb{Z}$ に対して, $$ \chi(ab)=\chi(a)\chi(b). $$

(3) 任意の $a\in\mathbb{Z}$ に対して, $$ \chi(a)=0\Longleftrightarrow\gcd(a, m)>1. $$

[例] 写像 $\rho_{1}:\mathbb{Z}\rightarrow\mathbb{C}$ を, 各 $a\in\mathbb{Z}$ に対して $\rho_{1}(a)=1$ とおくことにより定めると, $\rho_{1}$ は法 $1$ に関する Dirichlet 指標である. $\rho_{1}$ を主指標という.

[例] $\rho_{1}^{(m)}:\mathbb{Z}\rightarrow\mathbb{C}$ を $$ \rho_{1}^{(m)}(a) = \begin{cases} 1, & \mbox{$\gcd(a, m)=1$ のとき}, \\ 0, & \mbox{$\gcd(a, m)>1$ のとき}. \end{cases} $$ によって定めると, $\rho_{1}^{(m)}$ は $m$ を法とする Dirichlet 指標になる. $\rho_{1}^{(m)}$ を法 $m$ に関する自明な指標あるいは単位指標という. $m=1$ のとき, $\rho_{1}^{(1)}$ は主指標 $\rho_{1}$ に一致する.

[例] 奇素数 $p$ に関する Legendre 記号 $\displaystyle\left(\frac{*}{p}\right)$ は, 法 $p$ に関する Dirichlet 指標である.

[例] 奇数 $m\geq 3$ に関する Jacobi 記号 $\displaystyle\left(\frac{*}{m}\right)$ は, 法 $m$ に関する Dirichlet 指標である.

[命題] 任意の Dirichlet 指標 $\chi$ に対して, $\chi(1)=1$ が成り立つ.

[証明] 定義の条件 (2) より, $$ \chi(1) = \chi(1\cdot 1) = \chi(1)\chi(1). $$ また, 定義の条件 (3) より, $\chi(1)\neq 0$. ゆえに, $\chi(1)=1$. (証明終)

[命題] $\chi$ を法 $m$ のDirichlet 指標とする. このとき, $$ \chi(0) = \begin{cases} 0, & \mbox{$m\geq 2$ のとき}, \\ 1, & \mbox{$m=1$ のとき}. \end{cases} $$

[証明] $\gcd(0, m)=m$ であることに注意すると, $m\geq 2$ のときは, 定義の条件 (3) より明らか. $m=1$ のときは, $\chi(1)=1$ の証明と同様にして示せる. (証明終)

既約剰余類群の指標との関係

一般に, $G$ を有限 Abel 群とするとき, $G$ から乗法群 $\mathbb{C}^{\times}$ への準同型写像のことを $G$ の指標という.

$m$ を正の整数とする. 法 $m$ に関する既約剰余類の全体 $$ (\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times} = \{ a+m\mathbb{Z} \mid \gcd(a, m)=1 \} $$ は乗法に関して有限 Abel 群になる. この群を法 $m$ に関する既約剰余類群という.

法 $m$ に関するDirichlet 指標 $\chi$ に対し, 写像 $$ \widetilde{\chi}:(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times}\longrightarrow\mathbb{C}^{\times},\quad a+m\mathbb{Z} \longmapsto \chi(a) $$ を考える. ここで, $a$ は $\gcd(a, m)=1$ を満たす整数である. $\widetilde{\chi}$ は既約剰余類群 $(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times}$ の指標である. 実際, Dirichlet 指標の定義の条件 (1), (3) より, $\widetilde{\chi}$ は well-defined である. また, 条件 (2) より, $\widetilde{\chi}$ が準同型になることもいえる.

逆に, 既約剰余類群 $(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times}$ の指標 $\widetilde{\chi}$ に対し, 写像 $\chi:\mathbb{Z}\rightarrow\mathbb{C}$ を, 各 $a\in\mathbb{Z}$ に対し $$ \chi(a) = \begin{cases} \widetilde{\chi}(a+m\mathbb{Z}), & \mbox{$\gcd(a, m)=1$ のとき}, \\ 0, & \mbox{$\gcd(a, m)>1$ のとき} \end{cases} $$ とおくことにより定めると, $\chi$ は法 $m$ に関する Dirichlet 指標になる.

こうして, 法 $m$ に関する Dirichlet 指標全体と, 既約剰余類群 $(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times}$ の指標全体とは $1$ 対 $1$ に対応する. そのため, 既約剰余類群の指標のことを Dirichlet 指標と定義する文献もある.

Dirichlet 指標の導手

$m$ を正の整数とし, $\chi$ を法 $m$ に関する Dirichlet 指標とする.

$n$ を $m$ の倍数とする. 写像 $\chi^{(n)}:\mathbb{Z}\rightarrow\mathbb{C}^{\times}$ を, 各 $a\in\mathbb{Z}$ に対し $$ \chi^{(n)}(a) = \begin{cases} \chi(a), & \mbox{$\gcd(a, n)=1$ のとき}, \\ 0, & \mbox{$\gcd(a, n)>1$ のとき} \end{cases} $$ とおくことによって定めると, $\chi^{(n)}$ は法 $n$ に関する Dirichlet 指標になる. $\chi^{(n)}$ を $\chi$ から導かれる Dirichlet 指標という.

$\chi^{(n)}$ に対応する $(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}$ の指標 $\widetilde{\chi^{(n)}}$ は, $\chi$ に対応する $(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times}$ の指標 $\widetilde{\chi}$ と, 自然な全射準同型 $$ \pi_{m,n}: (\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^{\times}\longrightarrow (\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times}, \quad a+n\mathbb{Z}\longmapsto a+m\mathbb{Z} $$ との合成である. すなわち, $$ \widetilde{\chi^{(n)}} = \widetilde{\chi}\circ\pi_{m,n}. $$

法 $m$ に関する Dirichlet 指標 $\chi$ が $m$ の正の約数 $d$ で定義されるとは, 法 $d$ に関する Dirichlet 指標 $\psi$ が存在して $\chi=\psi^{(m)}$ となるときにいう.

$\chi$ が定義される最小の正の約数を $\chi$ の導手という.

$\chi$ の導手が $m$ 自身であるとき, $\chi$ は原始的であるという.

[例] 法 $m$ に関する自明な指標 $\rho_{1}^{(m)}$ は主指標 $\rho_{1}$ から導かれる Dirichlet 指標であり, その導手は $1$ である.

[例] $p$ を素数とするとき, 法 $p$ に関する自明でない Dirichlet 指標は原始的である. すなわち, その導手は $p$ である.

参考文献

  • 山本芳彦:数論入門, 岩波書店, 2003.

【theme : 数学
【genre : 学問・文化・芸術

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