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2次体のイデアル類群と類数の計算例(m=10)

2 次体のイデアル類群と類数の計算例。

※ MathJax を使用しています。数式を表示するためには、JavaScript をオンにする必要があります。

$K=\mathbb{Q}(\sqrt{m})$, $m=10$ とおく.

$d(K)$ を $K$ の判別式, $O_{K}$ を $K$ の整数環とする. $m\equiv 2\pmod{4}$ であるから, $O_{K}=\mathbb{Z}[\sqrt{m}]$, $d(K)=4m = 40$ である.

$n=[K:\mathbb{Q}]=2$ とおく. $r_{1}$ を実の共役体の個数, $2r_{2}$ を虚の共役体の個数とすると, $n=r_{1}+2r_{2}$. $K$ は実 $2$ 次体であるから, $r_{1}=1$, $r_{2}=0$.

Minkowski の定数 $M_{K}$ を計算すると, $$ M_{K} = \left(\frac{4}{\pi}\right)^{r_{2}}\frac{n!}{n^{n}}\sqrt{\lvert d(K)\rvert} = \frac{\sqrt{40}}{2} = 3.16\cdots < 4. $$ ゆえに, すべてのイデアル類はノルムが $3$ 以下の整イデアルを含む. そこで, $3$ 以下の有理素数について, $K/\mathbb{Q}$ での素イデアル分解の様子を調べる.

$K$ の元 $\alpha$ に対し, $\alpha$ の $K/\mathbb{Q}$ に関するノルムを $N_{K/\mathbb{Q}}(\alpha)$ で表す. また, $K$ のイデアル $I$ に対し, $I$ のノルムを $N(I)$ で表す.

$f(X)\in\mathbb{Q}[X]$ を $\sqrt{m}$ の $\mathbb{Q}$ 上の最小多項式とすると, $f(X)=X^{2}+10$ である. \begin{align*} f(X)&\equiv X^{2}\pmod{2}, \\ f(X)&\equiv X^{2}-1\equiv (X+1)(X-1)\pmod{3} \end{align*} であるから, 各々の有理素数の $K/\mathbb{Q}$ での素イデアル分解は, \begin{align*} &(2) = P_{2}^{2},\quad N(P_{2}) = 2, \\ &P_{2} = (2, \sqrt{10}), \\ &(3) = P_{3}P_{3}',\quad N(P_{3}) = N(P_{3}') = 3, \\ &P_{3} = (3, \sqrt{10} + 1) = (3, 1 + \sqrt{10}), \\ &P_{3}' = (3, \sqrt{10} - 1) = (3, 1 - \sqrt{10}). \end{align*} ノルムが $3$ 以下の整イデアルは $(1)$, $P_{2}$, $P_{3}$, $P_{3}'$ の $4$ つである.

$\mathcal{C}_{K}$ を $K$ のイデアル類群, $h_{K}$ を $K$ の類数とする. $K$ のイデアル $I$ に対し, $I$ が属するイデアル類を $[I]$ で表す.

もし仮に $P_{2}$ が単項イデアルであるとすると, $$ P_{2} = (a+b\sqrt{10}),\quad a,\,b\in\mathbb{Z} $$ と表されるから, $$ 2 = N(P_{2}) = \lvert N_{K/\mathbb{Q}}(a+b\sqrt{10})\rvert = a^{2} - 10b^{2}\equiv a^{2}\pmod{5}. $$ これは $2$ が $5$ を法として平方非剰余であることに反する. ゆえに, $P_{2}$ は単項イデアルでない. 同様に, $P_{3}$, $P_{3}'$ も単項イデアルでない.

$P_{2}^{2}=(2)$ より, $\mathcal{C}_{K}$ における $[P_{2}]$ の位数は $2$ である.

$P_{3}^{2}$ を計算すると, \begin{align*} P_{3}^{2} &= (3, 1+\sqrt{10})(3, 1+\sqrt{10}) \\ &= (3^{2}, 3(1+\sqrt{10}), (1+\sqrt{10})^{2}) \\ &= (9, 3+3\sqrt{10}, 11+2\sqrt{10}) \\ &= (1+\sqrt{10}). \end{align*} ゆえに, $P_{3}^{2}$ は単項イデアルである. このことと $P_{3}P_{3}'=(3)$ より, $$ [P_{3}]=[P_{3}]^{-1} = [P_{3}']. $$

$P_{2}P_{3}$ を計算すると, \begin{align*} P_{2}P_{3} &= (2, \sqrt{10})(3, 1+\sqrt{10}) \\ &= (2\cdot 3, 2(1+\sqrt{10}), \sqrt{10}\cdot 3, \sqrt{10}(1+\sqrt{10})) \\ &= (6, 2+2\sqrt{10}, 3\sqrt{10}, 10+\sqrt{10}) \\ &= (2-\sqrt{10}). \end{align*} ゆえに, $P_{2}P_{3}$ は単項イデアルである. このことと$P_{2}^{2}=(2)$ より, $$ [P_{3}]=[P_{2}]^{-1} = [P_{2}]. $$ したがって, $P_{2}$, $P_{3}$, $P_{3}'$ は同じイデアル類に属する.

以上より, $\mathcal{C}_{K}$ は $[P_{2}]$ で生成される位数 $2$ の巡回群であり, $h_{K}=2$ である.

【theme : 数学
【genre : 学問・文化・芸術

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