nの階乗はm乗数でない

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素数の分布に関する次の定理は有名である.

[定理 (Chebyshev)] 任意の整数 $n\geq 1$ に対して, ある素数 $p$ が存在して, $$ n < p \leq 2n $$ を満たす.

[注意] $n\geq 2$ ならば, $2n$ は合成数なので, 上の不等式は $n <p < 2n$ となる.

Chebyshev の定理は, 次の形で述べることもできる.

[定理 (Chebyshev)] 任意の実数 $x\geq 1$ に対して, ある素数 $p$ が存在して, $$ x < p \leq 2x $$ を満たす.

[証明] 二番目の形から最初の形が導かれるのは明らかなので, 最初の形から二番目の形が導かれることのみ示す.

$x$ を超えない最大の整数を $n$ とする. $x\geq 1$ より, $n\geq 1$ である. $n$ に対して最初の形を適用すると, $$ n < p \leq 2n \leq 2x. $$ $n<p$ は整数どうしの比較なので, $n+1\leq p$. 一方, $n$ の最大性から, $x<n+1$. ゆえに, $$ x < n+1\leq p $$ となる. (証明終)

[注意] $x>1$ ならば, 上の不等式は $x < p < 2x$ となる. 実際, $x\geq 2$ の場合は, 前の注意で述べたことを用いて, 上の証明と同様にして示せる. $1<x<2$ の場合は, $p=2$ とすればよい.

Chebyshev の定理を用いて, 今回の目標である次の定理を証明する.

[定理] $m$, $n$ を整数とし, $m\geq 2$, $n\geq 2$ を満たすとする. このとき, $n$ の階乗は $m$ 乗数でない.

[証明] 背理法により証明する. $n$ の階乗が $m$ 乗数であると仮定する. そのとき, ある整数 $s$ が存在して, $n!=s^{m}$ となる. 一方, $n/2$ ($\geq 1$) に対して Chebyshev の定理を適用すると, ある素数 $p$ が存在して, $n/2<p\leq n$ を満たす. $p$ は $n!$ の素因子であり, \begin{align*} p\mid n! &\Longrightarrow p\mid s^{m} \Longrightarrow p\mid s \Longrightarrow p^{m}\mid s^{m} \\ &\Longrightarrow p^{m-1}\biggm| \frac{s^{m}}{p} \Longrightarrow p^{m-1}\biggm|\frac{n!}{p}. \end{align*} $m\geq 2$ であることから, $2$ から $n$ までの整数の中に $p$ の倍数になるものが $p$ 自身のほかにも存在しなければならない. それを $a$ とおくと, ある整数 $k\geq 2$ が存在して, $a=kp$. ゆえに, $$ 2p \leq kp = a \leq n. $$ これは $n/2<p$ であることに反する. したがって, $n$ の階乗は $m$ 乗数でない.

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