リーマンのゼータ関数の無限積表示

※ MathJax を使用しています。数式を表示するためには、JavaScript をオンにする必要があります。

[補題] $(u_{n})$ を複素数列とするとき, 無限級数 $\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\lvert u_{n}\rvert$ が収束するならば, 無限積 $\displaystyle\prod_{n=1}^{\infty}(1+u_{n})$ は収束する.

[証明] 杉浦光夫 (著) 『解析入門I』 (東京大学出版会), 第 V 章定理 6.3 を参照.

$s$ を複素数とし, $s=\sigma+it$ ($\sigma$, $\tau$ は実数) とおく. $\sigma>1$ のとき, $$ \zeta(s) = \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{s}} $$ の右辺は絶対収束し, 複素関数 $\zeta(s)$ が定まる. これを Riemann のゼータ関数という.

整数 $n\geq 1$ に対して, $p_{n}$ を小さい方から数えて $n$ 番目の素数とする. 例えば, $p_{1}=2$, $p_{2}=3$, $p_{3}=5$, $\ldots$ である. こうして, 素数の列 $(p_{n})$ が定まる.

[定理] $s$ を複素数とし, $s=\sigma+it$ ($\sigma$, $\tau$ は実数) とおく. $\sigma>1$ のとき, 無限積 $$ \prod_{i=1}^{\infty}\left(1 - \frac{1}{p_{i}^{s}}\right)^{-1} $$ は収束し,その値は $\zeta(s)$ である.

[証明] まず,無限積が $\sigma>1$ のとき収束することを示す.各 $i=1$, $2$, $\ldots$ に対して $$ u_{i} = \left(1 - \frac{1}{p_{i}^{s}}\right)^{-1} - 1 $$ とおくことによって複素数列 $(u_{i})$ を定める. 各番号 $i$ に対して, \begin{align*} &\lvert p_{i}^{s}\rvert = \bigl\lvert\exp\bigl((\sigma+it)\log p_{i}^{s}\bigr)\bigr\rvert = p_{i}^{\sigma}, \\ &\sigma > 1 \Longrightarrow p_{i}^{\sigma} > 2 \Longrightarrow p_{i}^{\sigma} < 2(p_{i}^{\sigma}-1) \end{align*} であるから, \begin{align*} \lvert u_{i} \rvert &= \left\lvert\frac{p_{i}^{s}}{p_{i}^{s}-1} - 1\right\rvert = \left\lvert\frac{1}{p_{i}^{s}-1}\right\rvert \\ &\leq \frac{1}{\lvert p_{i}^{s}\rvert - 1} = \frac{1}{p_{i}^{\sigma} - 1} < \frac{2}{p_{i}^{\sigma}}. \end{align*} また, 各 $N=1$, $2$, $\ldots$ に対して, $$ \sum_{i=1}^{N}\frac{1}{p_{i}^{\sigma}} \leq\sum_{n=1}^{p_{N}}\frac{1}{n^{\sigma}} \leq\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{\sigma}} = \zeta(\sigma). $$ よって, $\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}\frac{1}{p_{i}^{\sigma}}$ は収束する (第 $N$ 部分和が単調増加かつ上に有界).ゆえに, $\displaystyle \sum_{i=1}^{\infty}u_{i}$ は絶対収束する.補題より, 無限積は収束する.

次に,この無限積が実際に $\zeta(s)$ に等しいことを示す.各整数 $N\geq 1$ に対して, 素数 $2$, $3$, $\ldots$, $p_{N}$ を素因数としてもたない正の整数全体を $S(N)$ とおく. まず, \begin{align*} \zeta(s)\left(1-\frac{1}{2^{s}}\right) &=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{s}}-\frac{1}{2^{s}}\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{s}} \\ &=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{s}}-\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{(2n)^{s}} \\ &=\sum_{m\in S(1)}\frac{1}{m^{s}} \end{align*} がいえる.ここで最後の辺の和における $m$ はすべての奇数にわたる.同様に, \begin{align*} \zeta(s)\left(1-\frac{1}{2^{s}}\right)\left(1-\frac{1}{3^{s}}\right) &=\sum_{m\in S(1)}\frac{1}{m^{s}}-\frac{1}{3^{s}}\sum_{m\in S(1)}\frac{1}{m^{s}} \\ &=\sum_{m\in S(1)}\frac{1}{m^{s}}-\sum_{m\in S(1)}\frac{1}{(3m)^{s}} \\ &=\sum_{m\in S(2)}\frac{1}{m^{s}} \end{align*} となり,最後の辺の和における $m$ は $2$ でも $3$ でも割り切れないすべての正の整数にわたる.一般に, $$ \zeta(s)\prod_{i=1}^{N}\left(1 - \frac{1}{p^{s}}\right) = \sum_{m\in S(N)}\frac{1}{m^{s}} $$ となり,最後の辺の和における $m$ は $2$, $3$, $\ldots$, $p_N$ を素因数としてもたないすべての正の整数にわたる.最後の辺の和の第 $1$ 項は $1$ で,第 $2$ 項は $\displaystyle \frac{1}{p_{N+1}^{s}}$ である.よって, 各 $N=1$, $2$, $\ldots$ に対して, \begin{align*} \left\lvert \sum_{m\in S(N)}\frac{1}{m^{s}} - 1 \right\rvert &= \left\lvert \sum_{m\in S(N)\setminus\{1\}}\frac{1}{m^{s}} \right\rvert \\ &\leq \sum_{m\in S(N)\setminus\{1\}}\left\lvert \frac{1}{m^{s}}\right\rvert \\ &\leq \sum_{n=p_{N}}^{\infty}\left\lvert \frac{1}{n^{s}}\right\rvert. \end{align*} 任意の整数 $n\geq 1$ に対して $\lvert n^{s}\rvert = \lvert\exp((\sigma+it)\log n)\rvert = n^{\sigma}$ であるから, $$ \sum_{n=p_{N}}^{\infty}\left\lvert \frac{1}{n^{s}}\right\rvert = \sum_{n=p_{N}}\frac{1}{n^{\sigma}}. $$ $\sigma>1$ より, $$ \sum_{n=p_{N}}^{\infty}\frac{1}{n^{\sigma}} = \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{\sigma}} - \sum_{n=1}^{p_{N}}\frac{1}{n^{\sigma}} \rightarrow 0\quad (N\to\infty). $$ ゆえに, $$ \lim_{N\to\infty}\zeta(s)\prod_{i=1}^N\left(1-\frac{1}{p_{i}^{s}}\right) = \lim_{N\to\infty}\sum_{m\in S(N)}\frac{1}{m^{s}} = 1. $$ $\zeta(s)$ は $N$ に関係しないので, \begin{align*} \zeta(s) &= \left(\lim_{N\to\infty}\prod_{i=1}^N\left(1-\frac{1}{p_{i}^{s}}\right)\right)^{-1} \\ &= \lim_{N\to\infty} \prod_{i=1}^{N}\left(1-\frac{1}{p_{i}^{s}}\right)^{-1} \\ &= \prod_{i=1}^{\infty}\left(1-\frac{1}{p_{i}^{s}}\right)^{-1} \end{align*} となる.(証明終)

無限積 $\displaystyle\prod_{i=1}^{\infty}\left(1 - \frac{1}{p_{i}^{s}}\right)^{-1}$ は Euler 積と呼ばれる. また,$\zeta(s)$ を Euler 積で表すことを $\zeta(s)$ の無限積表示という.

【theme : 数学
【genre : 学問・文化・芸術

プロフィール

よしいず

Author:よしいず
MATHEMATICS.PDFというウェブサイトを運営しています。

管理の都合上、トラックバックとコメントはオフにしてあります。ブログ経験者なら分かっていただけると思いますが、スパム(アダルトやその他の宣伝)ばかりなのが現実です。

リンクは自由です。当サイトの記事に対する間違いの指摘・意見・感想などを述べた記事からのリンクは歓迎です。ただし、ブログ記事アップ直後はミスが多く、頻繁に修正します。場合によっては削除する可能性もあります。その際、何も断りもなく修正・削除しますがご了承ください。内容を参考にする場合には投稿後一週間ほど様子を見てからにしてください(笑)。

記事の間違いを指摘するときは、その具体的箇所、理由(仕様に反するなど)・根拠(参考にした文献など)、代替案(同じ結果を得るための正しいやり方)も教えてください。そうしないと、(指摘される側および第三者はその時点では無知の状態なので、)どこが間違いなのか分かりませんし、本当に間違っているのかどうかが判断・検証できません。実際、間違いだと指摘されたことが結局は正しかったというケースもありますので。

このブログのタイトル一覧

リンク
月別アーカイブ
カテゴリ
最新記事
検索フォーム
RSSリンクの表示