複素関数の零点と極

複素関数の零点、留数、孤立特異点、除去可能特異点、極、真性特異点の定義。

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開円板と領域

$\mathbb{C}$ の点 $z_{0}$ と実数 $R>0$ に対して, $$ B_{R}(z_{0}) = \{ z\in\mathbb{C} \mid \lvert z-z_{0}\rvert < R \} $$ とおく. $B_{R}(z_{0})$ を, $z_{0}$ を中心, $R$ を半径とする開円板という.

$\mathbb{C}$ の部分集合 $D$ が開集合であるとは, $D$ の任意の点 $z_{0}$ に対して, ある実数 $R>0$ が存在して, $B_{R}(z_{0})\subseteq D$ が成り立つときにいう. 特に, $\mathbb{C}$ および空集合 $\emptyset$ は開集合である.

$\mathbb{C}$ の部分集合 $D$ が弧状連結であるとは, $D$ の任意の $2$ 点 $z_{1}$, $z_{2}$ に対して, $\mathbb{R}$ の閉区間 $[a, b]$ から $D$ への連続写像 $l$ が存在して, $l(a)=z_{1}$, $l(b)=z_{2}$ が成り立つときにいう.

弧状連結な開集合を領域という. 開円板は領域である. また, $r$, $R$ を実数とし, $0\leq r<R$ とするとき, $\mathbb{C}$ の部分集合 $$ \{ z\in\mathbb{C} \mid r<\lvert z-z_{0}\rvert < R \} $$ は領域である. これを環状領域という. 特に, $r=0$ のとき, $$ \{ z\in\mathbb{C} \mid 0<\lvert z-z_{0}\rvert < R \} = B_{R}(z_{0})\setminus\{z_{0}\} $$ である.

正則関数の零点

$D$ を領域とし, $f(z)$ を $D$ 上定義された複素関数とする. $\mathbb{C}$ の点 $z_{0}$ が $f(z)$ の零点であるとは, $f(z_{0})=0$ が成り立つときにいう.

この節では以下, $f(z)$ は $D$ 上正則で, 零写像ではないとする.

$f(z)$ は $D$ の任意の点 $z_{0}$ を中心に Taylor 展開される. $z_{0}$ が $f(z)$ の零点ならば, ある整数 $k>0$ が一意的に存在して, \begin{align*} f(z) &= \sum_{n=k}^{\infty}c_{n}(z-z_{0})^{n} \\ &= c_{k}(z-z_{0})^{k} + c_{k+1}(z-z_{0})^{k+1} + \cdots \end{align*} のように展開される. ただし, $c_{k}\neq 0$ である. このとき, $z_{0}$ を $f(z)$ の $k$ 位の零点といい, $k$ を零点 $z_{0}$ の位数という.

[定理] $a\in D$ が $f(z)$ の $k$ 位の零点であるための必要十分条件は, ある実数 $R>0$ と $D$ 内の開円板 $B_{R}(z_{0})$ 上のある正則関数 $f_{0}(z)$ が存在して, $$ f(z) = (z-z_{0})^{k}f_{0}(z),\quad f_{0}(z_{0})\neq 0\quad \bigl(\forall z\in B_{R}(z_{0})\bigr) $$ が成り立つことである.

[定理] $a\in D$ が $f(z)$ の $k$ 位の零点であるための必要十分条件は, 微分係数について $f^{(i)}(z_{0})=0$ ($0\leq i\leq k$) かつ $f^{(k)}(z_{0})\neq 0$ が成り立つことである.

[定理] $\mathcal{N}_{f}=\{z_{0}\in D\mid f(z_{0})=0 \}$ とおく. すなわち, $\mathcal{N}_{f}$ を $f(z)$ の零点全体からなる集合とする. $\mathcal{N}_{f}$ の元 $z_{0}$ はすべて $\mathcal{N}_{f}$ の孤立点である. すなわち, ある実数 $R>0$ が存在して, $$ B_{R}(z_{0})\cap \mathcal{N}_{f}=\{z_{0}\} $$ が成り立つ.

複素関数の孤立特異点

複素関数 $f(z)$ は, 開円板 $B_{R}(z_{0})$ においては正則でないが, 環状領域 $B_{R}(z_{0})\setminus\{z_{0}\}$ においては正則であるとする. このとき, $z_{0}$ を $f(z)$ の孤立特異点という.

$B_{R}(z_{0})\setminus\{z_{0}\}$ において正則であるとき, $f(z)$ は点 $z_{0}$ を中心に Laurent 展開される. すなわち, \begin{align*} f(z) &= \sum_{n=-\infty}^{\infty}c_{n}(z-z_{0})^{n} \\ &= \sum_{n=1}^{\infty}\frac{c_{-n}}{(z-z_{0})^{n}} + \sum_{n=0}^{\infty}c_{n}(z-z_{0})^{n} \end{align*} と表され, 右辺の級数は $B_{R}(z_{0})\setminus\{z_{0}\}$ で絶対かつ一様収束する. 負冪の項の和 $\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\frac{c_{-n}}{(z-z_{0})^{n}}$ をこの Laurent 展開の主要部という. 主要部の最初の係数 $c_{-1}$ を $f(z)$ の $z_{0}$ での留数という.

孤立特異点は, Laurent 展開の主要部によって, 除去可能特異点, 極, 真性特異点の $3$ つに分類される.

主要部が $0$ であるとき, すなわち, $c_{-n}$ ($n=1$, $2$, $\ldots$) がすべて $0$ であるとき, $z_{0}$ を $f(z)$ の除去可能特異点という. この場合, $f(z_{0})=c_{0}$ と定義しなおすことにより, $\displaystyle f(z)=\sum_{n=0}^{\infty}c_{n}(z-z_{0})^{n}$ となり, $f(z)$ は $B_{R}(z_{0})$ 上正則になる.

主要部が $0$ でない有限和のとき, すなわち, $c_{-n}$ ($n=1$, $2$, $\ldots$) の中に $0$ でないものが有限個しかないとき, $z_{0}$ を $f(z)$ の極という.

主要部が有限和でないとき, すなわち, $c_{-n}$ ($n=1$, $2$, $\ldots$) の中に $0$ でないものが無限個あるとき, $z_{0}$ を $f(z)$ の真性特異点という.

複素関数の極

複素関数 $f(z)$ は環状領域 $B_{R}(z_{0})\setminus\{z_{0}\}$ で正則であるとする. $f(z)$ は点 $z_{0}$ を中心に Laurent 展開される. その主要部が $0$ でない有限和のとき, $z_{0}$ を $f(z)$ の極というのであった. もっと詳細に, 主要部が $$ \frac{c_{-k}}{(z-z_{0})^{k}} + \frac{c_{-k+1}}{(z-z_{0})^{k-1}} + \cdots + \frac{c_{-1}}{z-z_{0}},\quad c_{-k}\neq 0 $$ なる形であるとき, $z_{0}$ を $f(z)$ の $k$ 位の極といい, $k$ を $z_{0}$ の位数という.

[定理] $z_{0}$ が $f(z)$ の $k$ 位の極であるための必要十分条件は, $B_{R}(z_{0})$ 上の正則関数 $f_{0}(z)$ が存在して $$ f(z) = \frac{f_{0}(z)}{(z-z_{0})^{k}},\quad f_{0}(z_{0})\neq 0\quad \bigl(\forall z\in B_{R}(z_{0})\setminus\{z_{0}\}\bigr) $$ が成り立つことである.

[定理] $z_{0}$ が $f(z)$ の極であるための必要十分条件は $\displaystyle\lim_{z\to z_{0}}\lvert f(z)\rvert = \infty$ が成り立つことである.

[定理] 複素関数 $f(z)$ は $B_{R}(z_{0})$ で正則であるとする. このとき, $f(z)$ が $z_{0}$ で $k$ 位の零点をもつことと $1/f(z)$ が $z_{0}$ で $k$ 位の極をもつことは同値である.

参考文献

  • 田村二郎: 解析関数 (新版), 裳華房, 1983
  • 杉浦光夫: 解析入門II, 東京大学出版会, 1985.
  • 小平邦彦: 複素解析, 岩波書店, 1991.
  • 志賀啓成: 複素解析学I 基礎理論, 培風館, 1997.
  • 新井朝雄: 複素解析とその応用, 共立出版, 2006.

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