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Stothers-MasonのABC定理

※ MathJax を使用しています。数式を表示するためには、JavaScript をオンにする必要があります。

$K$ を標数 $0$ の体, $K[t]$ を $K$ の多項式環とする. このとき, $K[t]$ は素元分解整域である.

$A\in K[t]$ に対して, $A'$ を $A$ の形式的微分とする.

[補題] $K$ を標数 $0$ の体, $K[t]$ を $K$ の多項式環とし, $A$, $B\in K[t]\setminus\{0\}$ とする. このとき, $AB' - BA' = 0$ ならば, ある $c\in K^{\times}$ が存在して $A=cB$ が成り立つ.

[証明] $AB' - BA' = 0$ と仮定する.

$A$, $B$ のどちらかが定数である場合. $A$ が定数ならば, $A'=0$ であるから, $AB'=0$ である. $A\neq 0$ より, $B'=0$ である. $K$ の標数は $0$ であるから, $B$ は定数である. 同様に, $B$ が定数ならば $A$ も定数である. このとき, $c=A/B$ とおけばよい.

$A$, $B$ の両方が定数でない場合. $K[t]$ の素元 $P$ を任意にとる. $A=P^{e}S$, $B=P^{f}T$ ($e\geq 0$, $f\geq 0$ は整数, $S$, $T$ は $P$ と互いに素な多項式) とおく. $e=f$ を示せばよい.

$A$, $B$ を微分すると, \begin{align*} A' &= P^{e-1}(eP'S+PS'), \\ B' &= P^{f-1}(fP'T+PT'). \end{align*} ゆえに, \begin{align*} AB' &= P^{e+f-1}S(eP'T+PT'), \\ A'B &= P^{e+f-1}T(fP'S+PS'). \end{align*} 仮定より $AB' = BA'$ であるから, $$ S(eP'T+PT') = T(fP'S+PS'). $$ 整理すると, $$ (e-f)P'ST = P(S'T-ST'). $$ $S$, $T$ は $P$ と互いに素であるから, $P\mid (e-f)P'$ である. もし仮に $e-f\neq 0$ であるとすれば, $P$ の根は $P'$ との共通根である. ところが, $K$ は標数 $0$ の体であるから, 素元 $P$ は $K$ 上の既約多項式であり, 重根をもたない. よって, $P$ と $P'$ の共通根は存在しない. これは矛盾である. したがって, $e=f$ でなければならない. (証明終)

$A\in K[t]\setminus K$ とする. $A=P_{1}^{e_{1}}\cdots P_{r}^{e_{r}}$ を $A$ の素元分解とすると, 分解の仕方は単数倍および素因子の順番を除き一意的であるから, 次数 $\deg(P_{1}\cdots P_{r})$ は $A$ に対して一意的に定まる. これを $N_{0}(A)$ で表す.

$K$ が代数的閉体のとき, $K[t]$ の素元は $1$ 次式なので, $N_{0}(A)$ は $A$ の相異なる根の個数を表している.

[Stothers-Mason の ABC 定理] $K$ を標数 $0$ の体とし, $K[t]$ を $K$ 上の多項式環とする. $A$, $B$, $C\in K[t]$ とし, $A$, $B$, $C$ は互いに素で, $\deg(ABC)\geq 1$ であり, $A+B+C=0$ を満たすとする. このとき, $$ \max\{ \deg A,\,\deg B,\,\deg C \} < N_{0}(ABC) $$ が成り立つ.

[証明] $A$, $B$, $C$ は二つずつ互いに素である. 実際, もし仮に $A$, $B$ が互いに素でなければ, $A$, $B$ に共通の素因子 $P$ が存在する. $C=-A-B$ より, $P\mid C$. これは $A$, $B$, $C$ が互いに素であることに反する. 他の場合も同様である.

$D=AB'-BA'$ とおく. $A+B+C=0$ より $A'+B'+C'=0$ であるから, $$ D = A(-C'-A')-(-C-A)A' = CA'-AC'. $$ 同様に, $$ D = (-B-C)B'-B(-C'-A') = BC'-CB'. $$ さて, \begin{align*} \deg D &= \deg(AB'-B'A) \\ &\leq\max\{ \deg AB',\,\deg BA' \} \\ &\leq\deg(AB)-1 < \deg(AB) \end{align*} より, \begin{align*} \deg D + \deg C &< \deg(AB) + \deg C \\ &= \deg(ABC). \end{align*} 同様の議論によって, \begin{align*} & \deg D + \deg A < \deg(ABC), \\ & \deg D + \deg B < \deg(ABC) \end{align*} もいえる. ゆえに, \begin{equation} \deg D + \max\{ \deg A, \deg B, \deg C\} < \deg(ABC). \tag{1} \end{equation}

$\deg(ABC)\geq 1$ より, $ABC=P_{1}^{e_{1}}P_{2}^{e_{2}}\cdots P_{r}^{e_{r}}$ のように素元分解することができる. 各 $i$ に対して, $P_{i}^{e_{i}}\mid ABC$ とすれば, $A$, $B$, $C$ は二つずつ互いに素であるから, $P_{i}^{e_{i}}$ は $A$, $B$, $C$ のどれかを割る. $P_{i}^{e_{i}}\mid A$ とすれば, $P_{i}^{e_{i}-1}\mid A'$ であるから, $P_{i}^{e_{i}-1}\mid D$. 他の場合も同様である. よって, \begin{align*} P_{i}^{e_{i}-1}\mid D\;(1\leq i\leq r) &\Longrightarrow P_{1}^{e_{1}-1}P_{2}^{e_{2}-1}\cdots P_{r}^{e_{r}-1}\mid D \\ &\Longrightarrow ABC\mid DP_{1}P_{2}\cdots P_{r}. \end{align*} $A$, $B$ が互いに素であることと補題より $D\neq 0$ であるから, \begin{align*} \deg(ABC) &\leq \deg(DP_{1}P_{2}\cdots P_{r}) \\ &= \deg D + \deg(P_{1}P_{2}\cdots P_{r}) \\ &= \deg D + N_{0}(ABC). \end{align*} これと (1) より, 求める結果が得られる. (証明終)

[注意] $K$ を標数 $p>2$ の体とする. $A=-1$, $B=t^{p}$, $C=(1-t)^{p}$ とおくと, $A$, $B$, $C$ は互いに素であり, $K[t]$ において $$ A+B+C = -1 + t^{p} + (1-t)^{p} = 0 $$ となるが, $$ N_{0}(ABC) = \deg\bigl(t(1-t)\bigr) = 2 $$ かつ $$ \max\{ \deg A,\,\deg B,\,\deg C \} = p\,(> 2) $$ となり, Stothers-Mason の ABC 定理における不等式は成り立たない.

【theme : 数学
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