同次冪の和と基本対称式との関係

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同次冪の和と基本対称式との関係

$K$ を体, $n\geq 1$ を整数, $x_{1}$, $x_{2}$, $\ldots$, $x_{n}\in K$ とし, \begin{equation} f(X) = (X-x_{1})(X-x_{2})\cdots(X-x_{n}) \tag{1} \end{equation} とおく. $f(X)$ は $X$ を変数とする $K$ 係数多項式である. また, $x_{1}$, $x_{2}$, $\ldots$, $x_{n}$ から作られる $j$ 番目の基本対称式に $(-1)^{j}$ を掛けたものを $a_{j}$ とおく. すなわち, \begin{equation} \begin{split} & a_{1} = -\sum_{i=1}^{n}x_{i} = -(x_{1}+x_{2}+\cdots+x_{n}), \\ & a_{2} = \sum_{i_{1}<i_{2}}x_{i_{1}}x_{i_{2}} = x_{1}x_{2} + x_{1}x_{3} + \cdots + x_{n-1}x_{n}, \\ & a_{3} = -\sum_{i_{1}<i_{2}<i_{3}}x_{i_{1}}x_{i_{2}}x_{i_{3}}, \\ & \cdots\cdots \\ & a_{n} = (-1)^{n}x_{1}x_{2}\cdots x_{n}. \end{split} \tag{2} \end{equation} 解と係数との関係より (あるいは, (1) の右辺を展開すれば), \begin{equation} f(X) = X^{n}+a_{1}X^{n-1}+\cdots+a_{n-1}X+a_{n} \tag{3} \end{equation} が成り立つ.

$f'(X)$ を $f(X)$ の形式的微分とする. 式 (3) より, \begin{equation} f'(X) = nX^{n-1}+(n-1)a_{1}X^{n-2}+\cdots+2a_{n-2}X + a_{n-1}. \tag{4} \end{equation} また, 式 (1) の右辺に積の微分法を適用すれば, \begin{equation} f'(X) = f(X)\sum_{j=1}^{n}\frac{1}{X-x_{j}} \tag{5} \end{equation} が得られる.

[補題] $c\in K$ とする. このとき, 任意の整数 $m\geq 0$ に対して, \begin{equation} \frac{1}{X-c} = \frac{1}{X} + \frac{c}{X^{2}} + \cdots + \frac{c^{m}}{X^{m+1}} + \frac{c^{m+1}}{X^{m+1}(X-c)} \tag{6} \end{equation} が成り立つ.

[証明] $m$ に関する数学的帰納法により証明する.

まず, $$ \frac{1}{X} + \frac{c}{X(X-c)} = \frac{(X-c)+c}{X(X-c)} = \frac{X}{X(X-c)} = \frac{1}{X-c} $$ より, $m=0$ のとき等式は成り立つ.

$m$ のとき等式が成り立つと仮定すると, \begin{align*} \frac{c^{m+1}}{X^{m+2}} + \frac{c^{m+2}}{X^{m+2}(X-c)} &= \frac{c^{m+1}}{X^{m+1}}\,\left(\frac{1}{X} + \frac{c}{X(X-c)} \right) \\ &= \frac{c^{m+1}}{X^{m+1}}\,\frac{1}{X-c} = \frac{c^{m+1}}{X^{m+1}(X-c)} \end{align*} であるから, $m+1$ のときも等式は成り立つ.

以上より, すべての整数 $m\geq 0$ に対して等式は成り立つ. (証明終)

各整数 $k\geq 0$ に対して, \begin{equation} S_{k} = x_{1}^{k} + x_{2}^{k} + \cdots + x_{n}^{k} \tag{7} \end{equation} とおく. 特に, $S_{0}=n$ である. 式 (5), 式 (6), 式 (7) より, 任意の整数 $m\geq 0$ に対して, \begin{align} f'(X) &= f(X)\left(\sum_{k=0}^{m}\frac{S_{k}}{X^{k+1}} + \sum_{j=1}^{n}\frac{x_{j}^{m+1}}{X^{m+1}(X-x_{j})}\right) \notag \\ &= f(X)\left(\sum_{k=0}^{m}\frac{S_{k}}{X^{k+1}} + \frac{g_{m}(X)}{X^{m+1}\prod_{j=1}^{n}(X-x_{j})}\right) \notag \\ &= f(X)\left(\sum_{k=0}^{m}\frac{S_{k}}{X^{k+1}} + \frac{g_{m}(X)}{X^{m+1}f(X)}\right) \tag{8} \end{align} が成り立つ. ここで, $$ g_{m}(X) = \sum_{j=1}^{n}\frac{x_{j}^{m+1}\prod_{j=1}^{n}(X-x_{j})}{X-x_{j}} = \sum_{j=1}^{n}\frac{x_{j}^{m+1}f(X)}{X-x_{j}} $$ は $n-1$ 次以下の $K$ 係数多項式である. $m$ を十分大きくとったとき, 式 (8) の右辺を展開すると, \begin{align*} S_{0}X^{n-1} &+ (S_{1}+a_{1}S_{0})X^{n-2} + (S_{2}+a_{1}S_{1}+a_{2}S_{0})X^{n-3} + \cdots \\ &+ (S_{n-2}+a_{1}S_{n-3}+\cdots+a_{n-2}S_{0})\,X \\ &+ (S_{n-1}+a_{1}S_{n-2}+\cdots+a_{n-1}S_{0}) \\ &+ (S_{n}+a_{1}S_{n-1}+\cdots+a_{n}S_{0})\,\frac{1}{X} + \cdots \end{align*} であり, これが $f'(X)$ に一致する. そこで, 各 $X^{n-k-1}$ の係数を比較すると, $1\leq k\leq n-1$ のとき, $$ S_{k}+a_{1}S_{k-1}+\cdots+a_{k}S_{0} = (n-k)a_{k}. $$ すなわち, $$ S_{k}+a_{1}S_{k-1}+\cdots+ka_{k} = 0. $$ また, $k\geq n$ のとき, $$ S_{k}+a_{1}S_{k-1}+\cdots+a_{n}S_{k-n} = 0 $$ となる. 以上をまとめると, 次の定理が得られる.

[定理] $K$ を体, $n\geq 1$ を整数, $x_{1}$, $x_{2}$, $\ldots$, $x_{n}\in K$ とし, $a_{j}$ ($j=1$, $2$, $\ldots$, $n$) を式 (2) のように定め, $S_{k}$ ($k=0$, $1$, $2$, $\ldots$) を式 (7) のように定める. このとき, 関係式 \begin{align*} & S_{1} + a_{1} = 0, \\ & S_{2} + a_{1}S_{1} + 2a_{2} = 0, \\ & S_{3} + a_{1}S_{2} + a_{2}S_{1} + 3a_{3} = 0, \\ & \cdots\cdots \\ & S_{n-1} + a_{1}S_{n-2} + \cdots + a_{n-2}S_{1} + (n-1)a_{n-1} = 0, \\ & S_{n} + a_{1}S_{n-1} + \cdots + a_{n-1}S_{1} + na_{n} = 0, \\ & S_{n+1} + a_{1}S_{n} + \cdots + a_{n}S_{1} = 0, \\ & S_{n+2} + a_{1}S_{n+1} + \cdots + a_{n}S_{2} = 0, \\ & \cdots\cdots \end{align*} が成り立つ.

補足

定理の証明の後半部分を正当化するために, 体 $K$ 上の $1$ 変数有理関数体 (= $K$ 係数の $1$ 変数有理式の全体からなる体) の変数の $1$ 次独立性について補足しておく.

[命題] $K(X)$ を $1$ 変数有理関数体とする. また, $m\geq 0$, $n\geq 0$ を整数とする. このとき, $X^{k}$ ($-m\leq k\leq n$) は $K$ 上 $1$ 次独立である. すなわち, 任意の $c_{k}\in K$ ($-m\leq k\leq n$) に対して, $$ \sum_{k=-m}^{n}c_{k}X^{k} = 0 \Longrightarrow \,c_{k}=0\;(-m\leq k\leq n) $$ が成り立つ.

[証明] $K$ 上の $1$ 変数多項式環 $K[X]$ において $X^{k}$ ($0\leq k\leq n+m$) が $K$ 上 $1$ 次独立であることを用いると, \begin{align*} \sum_{k=-m}^{n}c_{k}X^{k} = 0 &\Longrightarrow \sum_{k=-m}^{n}c_{k}X^{k+m} = X^{m}\sum_{k=-m}^{n}c_{k}X^{k} = 0 \\ &\Longrightarrow c_{k}=0\;(-m\leq k\leq n) \end{align*} となる. (証明終)

参考文献

  • 高木貞治:代数学講義 改訂新版, 共立出版, 1965.

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