数式処理ソフト Magma の語源

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数式処理システム Magma の名前は、ブルバキの数学原論の中の「代数」の巻で最初に定義されている、演算が定まった集合を意味する magma という言葉に由来するらしい。

原文のフランス語版を引用すると、

DÉFINITION 1. Soit $E$ un ensemble. On appelle loi de composition sur $E$ une application $f$ de $E\times E$ dans $E$. La valeur $f(x, y)$ de $f$ pour un couple $(x, y)\in E\times E$ s'appelle le composé de $x$ et de $y$ pour cette loi. Un ensemble muni d'une loi de composition est appelé un magma.

英語版では以下の通り。

DEFINITION 1. Let E be a set. A mapping f of $E\times E$ into $E$ is called a law of composition on E. The value $f(x, y)$ of $f$ for an ordered pair $(x, y)\in E\times E$ is called the composition of $x$ and $y$ under this law. A set with a law of composition is called magma.

これらを日本語に直訳すると、

定義 1. $E$ を集合とする. $E\times E$ から $E$ への写像 $f$ は $E$ の演算と呼ばれる. 順序対 $(x, y)\in E\times E$ に対する $f$ の値 $f(x, y)$ は, その演算のもとでの $x$ と $y$ との合成と呼ばれる. 演算をもつ集合はマグマと呼ばれる.

なお、演算のことを算法ともいう。乗法や加法は演算の一種である。さらに、乗法のもとでの合成が積であり、加法のもとでの合成が和である。また、magma の同義語に亜群 (groupoid) という用語もある。

ところで、ブルバキの数学原論は日本語版 (東京図書) もあるのに、なぜそれを最初に引用しなかったのか。

実際に該当箇所を引用してみると、

定義1. 集合 $E$ の元の間の内結合算法 (略して, ただ内算法ともいう) とは, $E\times E$ の部分集合 $A$ から $E$ への写像 $f$ のことである. $(x, y)\in A$ に対する $f$ の値 $f(x, y)$ のことを, $f$ による $x$ と $y$ との結合と呼ぶ.

このようなとき, 便宜上, $E$ 上の算法が与えられている (あるいは定義されている) という. もっとも重要な内算法は, すべての対 $(x, y)\in E\times E$ に対して定義されているようなものである. 同じように, 便宜上, このような算法は $E$ 上いたるところで定義されていると言われる. これから問題にするのは, 主として, このようないたるところで定義された算法である.

原文のフランス語版と比べて、意訳されているのがわかる。だが、多少の定義の違いは重要ではない (むしろ、日本語版のほうがより精密である)。最も注意すべき点は、「マグマ」という用語がどこにも見当たらないことである。

参考文献

  • 原田昌晃, 木田雅成:計算機代数のためのソフトウェア Magma, 数式処理 第 18 巻第 2 号 2012 年 5 月発行, pp. 105-116.

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