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自由加群の基底の濃度は無限ならば一定である

環上の自由加群において, ある基底の濃度が無限ならば, すべての基底の濃度が一致する.

※ MathJax を使用しています。数式を表示するためには、JavaScript をオンにする必要があります。

[定理] $R$ を環, $M$ を自由左 $R$ 加群とする. $M$ の $R$ 上の基底で濃度が無限であるものが存在すれば, $M$ の $R$ 上の基底の濃度は一定である.

[証明] $M$ の $R$ 上の基底 $\mathcal{U}=\{u_{j}\mid i\in I\}$ を任意にとる. 仮定より $M$ の $R$ 上の基底で濃度が無限であるものが存在するから, それを $\mathcal{U}_{0}=\{v_{j}\mid j\in J\}$ とおく. 必要ならば添字集合 $I$, $J$ を取り直して, 異なる添字の元が等しくならないようにする. そのとき, $\lvert \mathcal{U}\rvert=\lvert I\rvert$ かつ $\lvert \mathcal{U}_{0}\rvert = \lvert J\rvert$ である.

$\mathcal{U}_{0}$ は $M$ の $R$ 上の生成系だから, 各 $i\in I$ に対して, $J$ の空でない有限部分集合 $J(i)$ が存在して, \begin{equation} u_{i} = \sum_{j\in J(i)}a_{j}v_{j},\quad a_{j}\in R,\quad a_{j}\neq 0_{R} \tag{1} \end{equation} と表せる. このとき, \begin{equation} J = \bigcup_{i\in I}J(i) \tag{2} \end{equation} が成り立つ. なぜなら, もし仮に式 (2) が成り立たないとすると, $\displaystyle\bigcup_{i\in I}J(i)\subsetneq J$ であるから, ある $\displaystyle j_{0}\in J\setminus\bigcup_{i\in I}J(i)$ が存在する. このとき, すべての $i\in I$ に対して $j_{0}\not\in J(i)$ である. $\mathcal{U}$ は $M$ の $R$ 上の生成系だから, 式 (1) より $\mathcal{U}_{0}\setminus\{v_{j_{0}}\}$ もまた $M$ の $R$ 上の生成系である (ここで, 異なる添字の元は等しくないことから, $j\neq j_{0}$ ならば $v_{j}\neq v_{j_{0}}$ であることに注意せよ). このとき, $v_{j_{0}}$ は $\mathcal{U}_{0}\setminus\{v_{j_{0}}\}$ に属する有限個の元の $R$ 上の $1$ 次結合で表される. これは $\mathcal{U}_{0}$ が $R$ 上 $1$ 次独立であることに反する. ゆえに, 式 (2) が成り立たなければならない. 集合の濃度を比較すると, すべての $i\in I$ に対して, $J(i)$ は有限集合なので, $$ \lvert J(i)\rvert\leq\aleph_{0}. $$ ここで, $\aleph_{0}$ は可算濃度を表す. これと式 (2) より, $$ \lvert J\rvert \leq \lvert I\rvert\cdot\aleph_{0}. $$ もし仮に $I$ が有限集合ならば, 式 (2) より $J$ も有限集合となり矛盾が生じるから, $I$ は無限集合でなければならない. $\aleph_{0}$ は無限の濃度のうちで最小であるから, $\aleph_{0}\leq\lvert I\rvert$. ゆえに, $\lvert I\rvert\cdot\aleph_{0}=\lvert I\rvert$. したがって, $\lvert J\rvert\leq\lvert I\rvert$.

$\mathcal{U}$ と $\mathcal{U}_{0}$ を交換して同様の議論を行えば, $$ \lvert I\rvert \leq \lvert J\rvert\cdot\aleph_{0} = \lvert J\rvert. $$ Bernstein の定理より, $\lvert I\rvert = \lvert J\rvert$ を得る. ゆえに, $\lvert \mathcal{U}\rvert=\lvert \mathcal{U}_{0}\rvert$. (証明終)

参考文献

  • 堀田良之: 代数入門―群と加群―, 裳華房, 1987.

【theme : 数学
【genre : 学問・文化・芸術

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