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行列の積の固有多項式に関する等式

行列の積の固有多項式に関する等式とその証明.

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2014 年 7 月 24 日更新。

記号についての注意

$K$ を体とする. 正の整数 $m$, $n$ に対して, $M(m, n, K)$ は $K$ 上の $(m, n)$ 型の行列全体, $O_{m, n}$ は $(m, n)$ 型の零行列, $E_{n}$ は $n$ 次単位行列を表すものとする.

正方行列の場合

[補題] 相似な正方行列の固有多項式は一致する.

[証明] $A$, $B\in M(n, n, K)$ とし, $A$ と $B$ とは相似であるとする. このとき, ある正則行列 $P$ が存在して, $B=P^{-1}AP$. よって, \[ \det(P^{-1})\det(P) = \det(P^{-1}P) = \det(E_{n}) = 1 \] であることに注意すれば, \begin{align*} \det(tE_{n}-B) &= \det(tE_{n}-P^{-1}AP) \\ &= \det(P^{-1}(tE_{n}-A)P) \\ &= \det(P^{-1})\det(tE_{n}-A)\det P \\ &= \det(tE_{n}-A)\det(P^{-1})\det P \\ &= \det(tE_{n}-A) \end{align*} となり, $A$ と $B$ の固有多項式は一致する. (証明終)

[定理] $A$, $B\in M(n, n, K)$ とする. このとき, $AB$ と $BA$ の固有多項式は一致する.

[証明] \begin{align*} X &= \begin{bmatrix} tE_{n}-AB & -A \\ O & tE_{n} \end{bmatrix}, \\ Y &= \begin{bmatrix} tE_{n} & -A \\ O & tE_{n}-BA \end{bmatrix}, \\ P &= \begin{bmatrix} E_{n} & O \\ -B & E_{n} \end{bmatrix} \end{align*} とおく. すると, \begin{align*} P^{-1}XP &= \begin{bmatrix} E_{n} & O \\ B & E_{n} \end{bmatrix} \begin{bmatrix} tE_{n}-AB & -A \\ O & tE_{n} \end{bmatrix} \begin{bmatrix} E_{n} & O \\ -B & E_{n} \end{bmatrix} \\ &= \begin{bmatrix} tE_{n}-AB & -A \\ tE_{n}-BAB & tE_{n}-BA \end{bmatrix} \begin{bmatrix} E_{n} & O \\ -B & E_{n} \end{bmatrix} \\ &= \begin{bmatrix} tE_{n} & -A \\ O & tE_{n}-BA \end{bmatrix} = Y. \end{align*} ゆえに, \begin{align*} \det(tE_{n}-AB)\det(tE_{n}) &= \det X = \det(P^{-1}XP) = \det Y \\ &= \det(tE_{n})\det(tE_{n}-BA). \end{align*} $\det(tE_{n})=t^{n}\neq 0$ であるから, \[ \det(tE_{n}-AB) = \det(tE_{n}-BA) \] が成り立つ. すなわち, $AB$ と $BA$ の固有多項式は一致する. (証明終)

一般の場合

[定理] $A\in M(m, n, K)$, $B\in M(n, m, K)$, $m\geq n$ とする. このとき, $$ \det(tE_{m}-AB) = t^{m-n}\cdot\det(tE_{n}-BA) $$ が成り立つ.

[証明] $A$, $B$ の成分に $0$ を補完して作られる $m$ 次正方行列を $A'$, $B'$ とする. すなわち, \[ A' = \begin{bmatrix} A & O_{m,m-n} \end{bmatrix},\quad B' = \begin{bmatrix} B \\ O_{m-n, m} \end{bmatrix} \] とおく. 積を計算すると, \[ A'B' = AB,\quad B'A' = \begin{bmatrix} BA & \\ & O_{m-n, m-n} \end{bmatrix} \] である. $A$, $B$ がともに正方行列である場合の結果を用いれば, \begin{align*} \det(tE_{m}-AB) &= \det(tE_{m}-A'B') \\ &= \det(tE_{m}-B'A') \\ &= t^{m-n}\cdot\det(tE_{n}-BA) \end{align*} となる. (証明終)

【theme : 数学
【genre : 学問・文化・芸術

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